大田区の御嶽神社に参拝したとき(記事はこちらから)、その本殿裏手にある宮脇方式で植樹した「霊神の杜」をみて、宮脇方式がどのようなものかを知りたくなって、次の本を読んでみました。
宮脇昭『森の力 植物生態学者の理論と実践』(講談社、2013年)
著者は80歳を超えた学者のようですが、とても勢いのある文章で、引き込まれてしまいます。その内容は「宮脇方式による植樹のすすめ」というべきものです。以下に、そのポイントを記して見ます。
○ 潜在自然植生とは
もし人間が手をかけなくなった場合、その土地にはどのような植物が生きるはずなのか(潜在自然植生)。
人間の影響をすべて停止した場合に、その土地の自然環境の総和が、どのような緑の姿を支える潜在的な能力を持っているかを理論的に考察するのが潜在自然植生である。
○ ホンモノの森(潜在自然植生に基づく森)とは 「ふるさとの森」とはホンモノの森のこと。多層群落の森のこと。潜在自然植生に基づく森のこと。あらゆる「いのち」を守る森のこと。長持ちする森のこと。人の手をかけずに100年、1000年生き抜く森のこと。
日本の鎮守の森に象徴される土地本来の森。地域と共生する景観の象徴となり、生物多様性を維持し、環境保全と災害防止という両方の機能を併せ持つ土地本来の森。
○ ニセモノの森とは 私たちが自然林だと思っていた日本の森は、土地本来の森からかけ離れた二次林、造林されたスギ、ヒノキ、カラマツなどの単植の人工林などの代償植生であり、極端な表現が許されるなら、それはニセモノの森である。里山といわれて親しまれていた雑木林もまた土地本来の森ではない。
○ 宮脇方式とは できるだけ早く、しかも確実に土地本来の森を再生するための宮脇方式という「ふるさとの森」づくりは、一気にクライマックスへ、即ち一気に極相林に近い多層群落の森へと導く方法である。
有機物などの混じった表層度などから構成されるほっこらマウンドを造成し、そこに、潜在自然植生に基づくその土地に応じた樹種の選択を行い、その幼木のポット苗を混植・密植する。 |
私は、すごく興味深く読むと同時に、御嶽神社の「霊神の杜」の現在の姿を思い出しました。
5年前に宮脇方式で植樹したということだが、はじめて見たとき、本殿の裏手に、なぜこんなきたない藪があるのだろうと思いました。よく見ると、ごく細いシラカシ、スダジイ、クスノキなどの樹木が密集して生えていました。
この「霊神の杜」がホンモノの森になる日が待ち遠しいものです。